1.4 エーテルと近接作用


1.4.1 ニュートン力学とエーテル

 ここで再びエーテルに話を戻そう。
 エーテルといえば無視できないのが、すでに取り上げたマイケルソン・モーレーの実験
である。この実験は非常に有名だが、一方で、この実験ほど多くの人たちに誤解されてい
る実験はない。驚くほど多くの人たちが、この実験のことを、
『光速度不変の原理を証明した実験』
と信じ込まされている。多くの書物がそのように書き立てているので、そのように誤解す
る人が多いのも無理はない。
 確かに、相対論が提唱された後の時代にも、この種の実験が行われているのは事実であ
る。しかし、この実験は、もともと光速度不変の原理を証明するために行われたのではな
い。事実、この実験は、相対論が提唱されるずっと前から行われていたのである。つまり、
アインシュタインが勝手に、自分の学説に都合の良いように解釈しただけのことなのだ。
 では、この実験は何のために行われたのかというと、エーテル流による光速度の変化を
検出するために行われたのである。つまり、この実験では『エーテルの存在』が前提とな
っているのである。逆に言うと、もしエーテルが存在しなければ、こんな実験は行う意味
がない。なぜなら、もしエーテルが存在しなければ、当然エーテル流も存在せず、光速度
の変化も有り得ないからである。光速度が変化するのは、光の波を伝える媒体であるエー
テルが動くために、光が引きずられるから起こるのである。
 エーテルが存在しなければ、マイケルソン・モーレーの実験結果は、少しもニュートン
力学の矛盾を示すものではない。むしろ、その正しさを改めて証明したものといえる。逆
に言えば、ローレンツが、幾何光学を乱用して怪しげな解析結果をでっち上げたり、つい
にはローレンツ圧縮などという荒唐無稽なアイデアに頼ったりしたのは、彼がエーテルの
熱心な信者だったからである。
 ところが、アインシュタインは、ローレンツ圧縮という考え方を支持しながら、その前
提となるエーテルの存在を否定したのである。つまり、アインシュタインは、ローレンツ
圧縮という荒唐無稽なアイデアを正当化するために、わざわざ光速度不変の原理という、
これまた荒唐無稽なアイデアを提唱したのである。
 もっとも、こういう話をすると、
「エーテルは相対論によって否定されたのではないのか?」
と反論する人もいるだろう。つまり、
「エーテルはニュートン力学には欠かせないもののはずである!」
というわけである。
 だが、残念ながらそれは間違っている。エーテルはもともとニュートン力学にあったも
のではない。エーテルは、『光=波動説』によって持ち込まれた概念である。ちなみに、
ニュートン自身は『光=波動説』には否定的で、『光=粒子説』の信者だった。
 こうしてみると、驚くほど多くの人が、まったく誤った知識を植え付けられていること
がわかるだろう。多くの相対論本がエーテルから話を始めるので、これは無理もない。

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